ある半地下の喫茶店にはいった。
60周辺くらいのおかあさんがマスターをしているこぢんまりした空間だった。
入ってみると軽く音楽が流れていて、頭の中で再生されていた大阪loverから聴いたこともない洋楽に切り替わった。
夕方からお酒を飲んでいるお年寄りの集団が店奥にいた。
アイスコーヒーと、バタートーストを注文し、自分は読み途中の文庫本をめくり始めた。
物語が山場に差し掛かるところで、店内に流れる曲もアップテンポになった。
それに合わせて活字を追う速度も上がった。
そしてヒロインに起きた悲劇を主人公が知る場面で、ちょうど宇多田ヒカルのFirst Loveのイントロが流れ始めた。
読み終える頃にはおじいさま方の椅子を引いて店をあとにしだす物音が流れていた。
さて、もう3時間近く居座ってしまっているではないか。バイトもある。
こんな書き物は早く切り上げて店をあとにしなければ。
僕の頭の中では蛍の光がすでに流れていた。