田口

新潟から来た東京の大学2年生

身近で遠い存在

あるファミレスでバイトをしている。

基本的な仕事は大体こなしており、料理が出来上がるまでの工程や、お客様に提供されるまでの手順も全て把握している。

そんな自分はキッチンを任されることが多くある。

ファミレスなんてほとんどが、完成系の料理をチンして終わり。なんてイメージがあったが、意外にそんなこともなかった。パスタなら、麺を茹でるところから、鍋でソースを温めて、盛り付けまで自分でやらなければいけない。

従業員は、休憩時間や勤務終了後などに、社割と言って、半額でお店のメニューを食べることができる。

みんなこぞってそのシステムを利用しているイメージだが、自分は社割を食べることがいまだにできていない。そしてその理由を自分でたしかに把握しきれているわけでもないようだ。

料理工程を全て知っている。他人に社割を頼んでいると知られることが嫌。

こういった理由で避けている部分も確かにあると思う。しかし、それだけが自分が社割を頼まない理由ではないような気がする。

しかし、核の部分は今の自分に言語化することはできない。

なんかいやだ。

これが今の自分の精一杯の表現だ。

このようなことで、自分は社割を一度も食べたことがない。

そしてもちろん、プライベートで自分が勤めている店に行くことなど到底できない。

こうして大学生の自分は最寄りのファミレスという重要アイテムを失いながら生活しているのである。

いつも仕込みをして、鍋の上で混ぜ、客席に運んでいる。そんな料理たちから自分は、自意識という壁によって敬遠されているのである。

赤、緑の差し色が入った看板を街なかで見かけるとついつい反応してしまうのがここ一年の自分である。